進行していたプロジェクトや交渉を中断しなければならない時、どのように伝えれば相手との関係を維持できるのか悩むことは多いものです。ビジネスの現場では、状況の変化により計画を白紙に戻す決断を迫られる場面がどうしても発生します。そのような時に適切なマナーや言葉選びを知っておくことで、トラブルを未然に防ぎ、将来的な再開の可能性を残すことができます。相手への誠意ある対応と配慮を持って伝えることが、信頼関係を守るための第一歩となるはずです。
- 白紙に戻す際の適切な言い換え表現とマナー
- 相手に角を立てずに断るための理由の伝え方
- 状況別にそのまま使える具体的なメールの例文
- 今後のビジネスチャンスを繋ぐためのフォロー方法
計画を白紙に戻すビジネスメールの心構え
そもそも白紙に戻すとはどういう状態か

アカネあわわ…今まで頑張って積み上げたのが、全部パーになっちゃいました…



ええ。だからこそ、相手の『徒労感』にも配慮が必要なのよ。さあ、深呼吸して。
「白紙に戻す」という言葉は、これまでの交渉や計画を無かったことにし、初期状態へリセットすることを意味します。ビジネスシーンにおいては、進行中のプロジェクトの中止、内定の取り消しや辞退、契約交渉の打ち切りなど、決定事項や進行事項を完全に取り消す際に用いられます。
しかし、この言葉には「これまでの積み重ねをゼロにする」という強い拒絶や徒労感を与えるニュアンスが含まれています。相手が費やしてくれた時間や労力を無にしてしまうことへの配慮が欠かせない場面と言えます。そのため、単に「中止します」と事実だけを伝えるのではなく、そこに至るまでの検討過程や、苦渋の決断であったという背景をにじませることが求められます。相手にとって予期せぬ悪い知らせとなるケースが多いため、一方的な通告とならないよう、最大限の丁寧さと慎重さを持ってコミュニケーションを取る必要があります。
ビジネスで白紙に戻す際の言い換え表現





ハッキリ『無理です!』って言った方が親切じゃないですか?



それだと角が立つわ。『今はご縁がなかった』と伝えるのが大人のマナーよ。
「白紙に戻す」という表現は、相手に対してやや突き放した印象を与えかねないため、状況に応じてより柔らかい、あるいはビジネスとして適切な表現に言い換えることが望ましいです。相手の顔を立てつつ、こちらの意向を明確に伝えるための表現を使い分けることが大切です。
| ニュアンス | 言い換え表現 | 使用場面の例 |
| 一時的な停止 | ペンディングにする 一旦凍結する 時期を改める | 将来的に再開の可能性がある場合 |
| 丁寧な辞退 | 見送らせていただく 辞退させていただく 今回はご縁がなかったものとする | 採用辞退や提案を断る場合 |
| 再考の余地 | 再検討させていただく 一から練り直す ゼロベースで考える | 計画自体は見直すが関係は続く場合 |
| 決定的な中止 | 取りやめとする 中止とする 不採用とする | 明確にプロジェクトを終わらせる場合 |
言い換えカード
NG / 直接的
中止する
タップして言い換え ⇒
OK / 推奨
見送らせていただく
NG / 直接的
延期する
タップして言い換え ⇒
OK / 推奨
ペンディングにする
NG / 直接的
一からやり直す
タップして言い換え ⇒
OK / 推奨
再検討させていただく
NG / 直接的
お断りします
タップして言い換え ⇒
OK / 推奨
ご縁がなかったものとする
これらの言葉を選ぶ際は、相手との関係性や今後の取引の可能性を考慮します。例えば、完全に縁を切るわけではなく、タイミングが悪かっただけの場合は「時期を改める」「一旦凍結する」といった表現を使うことで、将来の可能性を残すことができます。
角を立てずに断るための理由の伝え方





本当の理由なんて気まずくて言えません…!詰められたらどうしよう…



大丈夫。個人の感情ではなく『組織の決定』として伝えれば、矢印はあなたに向かないわ。
断りの連絡を入れる際、最も頭を悩ませるのが「理由」の伝え方です。本当の理由が「予算に合わない」「他社の提案が良かった」といった相手にとってネガティブな内容であっても、それをストレートに伝えることが必ずしも正解ではありません。ビジネスコミュニケーションの研究においても、断る際には「詫び」と「理由(弁明)」をセットで提示し、相手の意向に添えない事情を説明することが、関係維持のための重要な配慮(ポライトネス)であるとされています【1】。
角を立てないためには、以下のような視点で理由を伝えると効果的です。
- 社内事情にする: 「社内の方針変更により」「予算編成の見直しにより」など、自分の一存ではなく組織の決定であることを強調することで、相手への個人攻撃ではないことを示します。
- タイミングの問題にする: 提案内容自体は評価しつつも、「現時点では導入が難しい」「時期尚早である」と伝えることで、相手のプライドを守ります。
- 総合的な判断とする: 特定の欠点を指摘するのではなく、「総合的に検討した結果」という言葉で全体的な判断であることを伝えます。
今後の関係を繋ぐクッション言葉の活用





わぁ、これならぶつかっても痛くないですね!ふわふわです!



そのまま投げたら相手が怪我をするわ。この『恐縮ですが』クッションで包んで。
断りのメールでは、本題に入る前や文末に「クッション言葉」を挟むことで、文章全体の印象を大きく和らげることができます。いきなり「今回はお断りします」と切り出すと冷淡に映りますが、相手の気持ちに配慮する言葉を添えることで、申し訳なさや誠意が伝わりやすくなります。
文頭で使えるクッション言葉
- 「大変恐縮ではございますが」
- 「誠に心苦しいのですが」
- 「せっかくのご提案ではございますが」
- 「不本意ながら」
文末で使えるクッション言葉
- 「またの機会がございましたら、ぜひお声がけいただけますと幸いです」
- 「今回はご期待に沿えず申し訳ございませんが、貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます」
- 「末筆ながら、貴社の更なるご多幸をお祈り申し上げます」
また、単に断って終わるのではなく、可能であれば「代案」を提示することも有効です。例えば「今回は難しいですが、来期の予算であれば検討可能です」といった前向きな情報を加えることで、関係を維持しようとする積極的な姿勢を示すことができます【1】。
メールを送るべき適切なタイミングとは





気が重いので、明日連絡してもいいですか…?



…後ろを見て。社長が『こんにゃく』をプルプルさせて待ってるわよ。今すぐ送りなさい。
計画を白紙に戻すことが決定したら、可能な限り速やかに相手に伝えるのが鉄則です。「言いにくいから」と連絡を先延ばしにすると、相手はその間もプロジェクトのためにリソースを割いたり、準備を進めたりしている可能性があります。連絡が遅くなればなるほど、相手に与える損害や迷惑が大きくなり、トラブルに発展するリスクが高まります。
基本的には、社内で正式決定が下りた時点で直ちに連絡を入れます。ただし、相手が重要な会議中であることや、休業日であることも考慮し、相手が落ち着いて内容を確認できる時間帯(平日の日中など)に送信するのがマナーです。もし、決定までに時間がかかりそうな場合は、「現在社内で検討中のため、〇日までに改めてご連絡いたします」と中間報告を入れておくことで、相手の不安を軽減することができます。
電話でのフォローが必要になるケース





メールしたのに、さらに電話もするんですか?緊張で声が震えそうです…



重要な相手だからこそよ。あなたの震える声が『申し訳なさ』として伝わるの。
メールは記録に残るため、言った言わないのトラブルを防ぐ上で有効な手段ですが、重要な案件を白紙に戻す場合は、メール一本で済ませることが失礼にあたることもあります。特に以下のようなケースでは、メールを送った後に電話でフォローを入れるか、あるいは電話で伝えた後に確認のメールを送る丁寧な対応が求められます。
- 長期間にわたり交渉を続けてきた案件の場合
- 相手がそのプロジェクトのために多大なコストや人員を割いている場合
- 役員クラスが関わる重要なプロジェクトの場合
- 今後も継続的に取引を行いたい重要顧客である場合
電話でのフォローは、文字だけでは伝わりにくい「申し訳ない」という感情を声のトーンで伝えることができます。直接言葉を交わすことで、相手の納得感を得やすくなり、わだかまりを残さずに次のステップへと進める可能性が高まります。
状況に応じた白紙に戻すビジネスメール
企画・提案を断る例文
正式決定後、即座に連絡
社内決定が下りたら、先延ばしにせず直ちに連絡。相手のリソースを無駄にしない配慮です。
メール送信(+電話)
基本はメールでOKですが、以下は電話も併用しましょう。
今後の関係性の示唆
「またの機会」という結びで、完全に縁を切る意図はないことを伝えて終了です。
企画や提案を白紙に戻す時の例文





教えてもらったポイント、全部入れて書いてみました!どうですかっ?



ええ、完璧よ。感謝と理由がしっかり伝わる、とても良い文面ね。
取引先からの新規提案や企画を断る場合のメールです。相手が提案に費やした労力への感謝を示しつつ、今回は採用できないことを明確かつ丁寧に伝えます。
件名: 新規プロジェクトのご提案に関する回答について(株式会社〇〇 氏名)
本文:
〇〇株式会社
〇〇部 〇〇様
いつも大変お世話になっております。
株式会社〇〇の〇〇です。
先日は、新規プロジェクトに関して素晴らしいご提案をいただき、
誠にありがとうございました。
社内で慎重に検討を重ねてまいりましたが、
この度は、ご提案を見送らせていただくこととなりました。
ご提示いただいたプランは非常に魅力的ではございましたが、
現在の弊社のリソース状況や優先課題と照らし合わせた結果、
直近での実施は困難であるとの判断に至りました。
せっかく熱心にご提案をいただきながら、
ご期待に沿えず誠に恐縮でございます。
今回はこのような結果となりましたが、
また別の機会に貴社のお力添えをいただくこともあるかと存じます。
その際は、何卒よろしくお願い申し上げます。
末筆ではございますが、貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます。
契約交渉を中止する際のメール文面





長い交渉でしたけど…お互いのために、ここで区切りをつけます。



ええ。相手が費やしてくれた時間と労力に、最大の敬意を払って幕を引きましょう。
契約締結に向けて進めていた話を、条件の不一致や方針転換により中止する場合の例文です。これまでの交渉への感謝と、中止に至った経緯を簡潔に伝えます。
件名: 〇〇契約に関する交渉終了のご連絡
本文:
〇〇株式会社
〇〇様
平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
株式会社〇〇の〇〇でございます。
さて、先日より協議を進めておりました〇〇契約の件につきまして、
社内にて最終的な審議を行いました結果、
誠に残念ながら、今回は契約締結を見送らせていただく運びとなりました。
これまで数回にわたり条件面での調整にご尽力いただきましたが、
弊社の予算編成の方針が変更となり、
現時点での契約締結が難しくなったためです。
〇〇様には多大なるお時間を割いていただいたにも関わらず、
このような結果となり、深くお詫び申し上げます。
また、ここまでご対応いただきましたことに心より感謝申し上げます。
今回は白紙に戻す形となりますが、
状況が変わりましたら、改めてご相談させていただく機会があれば幸いです。
何卒ご了承いただけますようお願い申し上げます。
採用の内定を辞退する場合の伝え方





評価していただいた感謝と、お応えできないお詫び…心を込めて伝えます。



分の選択に胸を張って。丁寧な辞退は、未来のあなた自身も助けることになるわ。
求職者が企業からの内定を辞退する場合、あるいは企業側が採用計画の変更などで選考を中止する場合に使えます。ここでは求職者が内定を辞退するケースを紹介します。
件名: 内定のご辞退につきまして(氏名)
本文:
〇〇株式会社
人事部 採用ご担当者様
この度は、内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
〇〇大学の〇〇と申します。
選考の過程におきましては、
面接などで貴重なお時間を割いていただき、
また、私のような者を高く評価していただきましたこと、心より感謝申し上げます。
このような名誉ある通知をいただきながら大変恐縮ではございますが、
一身上の都合により、この度の内定を辞退させていただきたくご連絡いたしました。
自身の適性やキャリアプランについて最後まで熟考いたしましたが、
別の道に進む決断をいたしました。
本来であれば直接お伺いしてお詫びすべきところ、
メールでのご連絡となりますことをご容赦ください。
御社にはご迷惑をおかけすることとなり、誠に申し訳ございません。
末筆ながら、貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます。
白紙に戻す意向を伝える英語のフレーズ





英語だとストレートすぎて、喧嘩売ってるみたいになりませんか!?難しい~!



直訳は危険ね。角を立てずに断るための、大人の英語表現を覚えましょう。
海外の取引先との交渉を白紙に戻す場合、”Cancel” という言葉は非常に強く、一方的な印象を与えることがあります。より丁寧で、将来の可能性を残す表現を選ぶことが大切です。
1. 丁寧にお断りする(辞退する)
- “We have decided to decline your proposal at this time.”(現時点では、ご提案を辞退することに決定いたしました。)
- “Unfortunately, we cannot proceed with this project.”(残念ながら、このプロジェクトを進めることはできません。)
2. 一旦見送る・延期する
- “We have decided to hold off on this project for now.”(このプロジェクトは一旦見送ることにしました。)
- “We would like to postpone the discussion until next quarter.”(次の四半期まで議論を延期したいと思います。)
3. 白紙に戻す(最初から考え直す)
- “We need to go back to the drawing board regarding this plan.”(この計画に関しては、白紙に戻して再検討する必要があります。)
- “We have to start from scratch.”(一からやり直さなければなりません。)
英語のメールでも、日本語と同様に “Thank you for your proposal, but…” のように感謝から始め、理由を簡潔に述べた上で、”We hope to have the opportunity to work with you in the future.”(将来ご一緒できる機会があることを願っています)と結ぶのが一般的です。
相手に失礼な印象を与えない件名の工夫








件名はメールの顔であり、相手が最初に目にする重要な要素です。白紙に戻すというネガティブな内容だからこそ、件名は明確かつ丁寧である必要があります。「お詫び」や「重要」といった言葉を使いすぎると、相手に過度な警戒感や不安を与えてしまうため注意が必要です。
- 具体的な用件を明記する:
- 〇:「〇〇プロジェクトのご提案に関する回答について」
- ×:「ご回答」「お知らせ」
- 用件がすぐに分かるようにすることで、相手が優先度を判断しやすくなります。
- 「相談」や「報告」のニュアンスを含める:
- 「〇〇契約に関するご相談」
- 「〇〇件の選考結果のご報告」
- 一方的な通告ではなく、対話の延長線上にあることを示唆します。
- 会社名・氏名を必ず入れる:
- 多数のメールを受け取る相手にとって、誰からの連絡かが一目で分かることは最低限のマナーです。
誠意が伝わる白紙に戻すビジネスメール





テクニックよりも、結局は『相手を思う心』が一番大切なんですね。



その通り。あなたの誠意は、きっと次のチャンスを運んでくるわ。
ビジネスにおいて計画を白紙に戻すことは、決して「悪」ではありません。状況の変化に対応するための必要な経営判断の一つです。しかし、そこに関わった人々の想いや労力を無視して良いわけではありません。
誠意とは、言葉の端々に表れる「相手への想像力」です。「このメールを受け取った相手はどう思うだろうか」「上司にどう報告すれば相手が困らないだろうか」と考え、言葉を選び抜く過程そのものが誠意となります。どんなに丁寧なテンプレートを使っても、そこに相手を思いやる心がなければ、機械的な冷たさが伝わってしまいます。
最後に、白紙に戻すメールを送る際に心に留めておきたいポイントをまとめます。これらを意識することで、今回の断りが終わりではなく、次の信頼関係への始まりとなるはずです。
白紙に戻すビジネスメールの書き方とマナー まとめ
- 白紙に戻すとは計画を初期状態へリセットすること
- 言い換え表現を使い分けて角が立つのを防ぐ
- 一時的な凍結ならペンディングや延期と伝える
- 完全な中止なら見送るや辞退すると表現する
- 断る際は最初に感謝と謝罪の気持ちを述べる
- 理由は社内事情やタイミングの不一致にする
- 相手の提案内容自体は否定しないよう配慮する
- クッション言葉を用いて文章の印象を和らげる
- またの機会を願う結びの言葉で余韻を残す
- 決定後は可能な限り速やかに相手へ連絡する
- 重要な案件はメール送信後に電話でフォローする
- 件名は具体的かつ用件が一目で分かるものにする
- 英語ではCancelを避けdeclineなどを使う
- 誠意ある対応が将来のビジネスチャンスを守る
- 相手の労力への敬意を文面に滲ませることが大切
参考文献
【1】林千恵・中井陽子. (2018). 接遇ビジネスにおける「客の要望に添えない場合の スタッフの断り談話とその応対」. 城西国際大学紀要, 27(8), 1-16.




