部署内で成果を褒められたとき、取引先から評価をいただいたとき、どんな言葉で返せば相手の好意を損なわず、次につながる関係を築けるのか迷うことはありませんか。複雑な敬語や社内外での距離感、メールという記録性まで意識すると、数行の返答でも難易度は一気に上がります。本記事は、褒めを否定しない受け止め方を軸に、使い回しやすい定型句とアレンジの考え方を整理し、状況別にすぐ使える文面を示します。
また、上司宛とお客様宛で変えるべきポイント、過度な謙遜や砕けすぎた表現を避けるコツ、前向きな一文で期待をつなぐ書き方も解説します。褒められた時の返し方ビジネスメール例文を押さえておけば、急な返信でも落ち着いて、丁寧で信頼感のある返答が整えられます。今日から実務で迷わないための最短ルートとしてご活用ください。
- 褒められたときの礼儀と返答の考え方
- 使い回しやすい定型フレーズと編集のコツ
- 相手別に好印象を与える文面の作り方
- 避けるべき表現と安全な言い換え
褒められた時の返し方ビジネスメール例文と基本マナー
褒められた時の返し方 例文を知る意味と背景

褒めへの返答は、受容、緩和(受け入れつつ控えめ)、回避の三類型に整理できます【1】【2】。ビジネスでは相手の評価を否定しない受容を基調に、過度な自己卑下を避け、関係維持や次の行動へ橋渡しする一文を添える運用が有効です【4】。メールは記録に残るため、瞬間的な感情よりも組織として望ましいメッセージに整える姿勢が求められます。
返答の骨格は次の三段で構成すると安定します。
- 感謝(お褒めの言葉への謝意)
- 分配(周囲への敬意や協働の強調)
- 未来(次回に向けた抱負や提供価値の継続)
この流れは、日本語談話における褒めの関係調整機能とも整合します【4】。例文を知る意義は、こうした骨格を短い文面に再現しやすくなる点にあります。
ビジネスメールで役立つ定型フレーズ集

まずは汎用的に差し替え可能なパーツを押さえます。
・感謝:
「お褒めの言葉を頂戴し、心より御礼申し上げます。」
「温かいお言葉をいただき、光栄に存じます。」
・分配:
「本件は関係各位のご支援の賜物です。」
「チームの協力あっての成果と受け止めております。」
・未来:
「引き続きご期待に沿えるよう研鑽いたします。」
「次回はより良い価値をご提供できるよう努めます。」
・締め:
「今後ともご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。」
「引き続きよろしくお願いいたします。」
これらを短文で連結し、相手名・案件名・時制を差し替えるだけで多くの場面に対応できます。受容を明示する第一文を先頭に置くと、相手の評価を支えつつ、やり取り全体のトーンを安定させられます【1】。
周囲への感謝を伝える言葉の使い方

功績を独占せず、関与者や組織に功績を分配する一文を添えると、謙虚さと調整力が伝わります【4】。ただし、過度な否定は相手の評価を打ち消す含意を生みます【2】。次の観点を意識すると、適切なバランスになります。
・主体の置き方:自分は協働の一員として表現する(賜物、支え、協力)。
・具体性:案件名や協力部門を一語だけ示す(営業部、開発チーム)。
・文量:礼を重ねすぎず一文で切る。
例:
「この成果は営業部の皆さまのご支援の賜物です。引き続き連携のほどお願い申し上げます。」
今後の展望や抱負を添えて印象を高める

褒めのやり取りは、次の行動を導く契機になります。未来志向の一文を添えると、相手に期待の置き場を提供できます【4】。数値や時期を簡潔に添えると、意欲と具体性が伝わります。
例:
「次回の提案では比較表を拡充し、選定判断の材料を強化いたします。」
「四半期内に改善版を展開できるよう段取りいたします。」
心理的効果から考える返答の重要性

会話研究では、褒めは関係の親和や場面調整の機能を担い、返答の仕方で相互の立場と距離が再設定されると論じられます【2】【4】。メールは同期的な相づちが使えないため、受容の明示と不要な自己否定の回避が読み手の安心につながります。ユーモアや親しみ語は、置きどころと強度を誤ると軽率に映る可能性があるため、後半セクションのガイドラインに沿って用いると安全です【3】。
避けたい不適切な表現とその理由

過度な謙遜や評価の否定は、相手の善意を弱める含意を持ちます【1】。次の表のように、理由と代替表現を押さえておくと迷いません。
NG表現 | 問題のポイント | 推奨の言い換え |
---|---|---|
とんでもございません | 評価の否定に聞こえ、相手の配慮を無にしやすい | ありがたく頂戴いたします、身に余るお言葉です |
まだまだです | 自己卑下で相手の観察を否定する含意 | 温かいお言葉を励みに、さらに努めます |
褒めてもらって嬉しいです | 口語的で対等・内輪の響きが強い | お言葉を頂戴し、光栄に存じます |
いえいえ大したことは | 成果の存在を曖昧化し責任もぼやける | 関係各位のご支援の賜物と受け止めております |
褒められた時の返し方ビジネスメール例文の実践フレーズ集
上司 に褒められた時 の返し方 メールでの表現例

上位者への返答は、受容→分配→未来の順で簡潔にまとめ、敬語レベルを一段上げます。社内のやり取りは記録性が高いため、事実・貢献者・次アクションが読み取れる構造が適しています【2】。
例文(社内・上司宛):
「本件につきましてお褒めの言葉を賜り、誠にありがとうございます。営業部および関係各位のご支援の賜物と受け止めております。次回提案では比較検討材料を拡充し、より確かな成果につなげてまいります。今後ともご指導のほどお願い申し上げます。」
応用のヒント
上司の評価軸(納期、品質、再現性)に触れる語を一語だけ差し込むと、期待の理解が伝わります。例えば「品質面での評価を励みに」など、観点を明示します。
お客様 お褒めの言葉 返信 例文で信頼を築く方法

対外宛では、組織としての丁寧さと責任感を明示します。相手の便益に言及し、次回提供価値を短く約束します【4】。
例文(対外・取引先宛):
「このたびは温かいお言葉を頂戴し、心より御礼申し上げます。本件は社内外の連携の賜物であり、引き続き貴社の業務効率向上に資するご提案を準備いたします。次回は導入後の効果測定も併せてご提示できるよう進めてまいります。今後とも変わらぬご愛顧のほどお願い申し上げます。」
応用のヒント
相手の成果や利益に焦点を当てた一文(業務効率、品質安定、リスク低減)を添えると、営業的価値が高まります。
褒められた時の返し方 ユーモアを添えて印象を和らげる

ユーモアは返答の主骨格(感謝・分配・未来)を損なわない位置で、ごく弱く挿入します。会話研究では、ユーモアは対立の緩和や親和の演出に寄与しますが、置きどころと強度が鍵となります【3】。
使用ガイド:
・対象:社内の近接関係や砕けたトーンが許容される相手に限定します。
・位置:末尾の一節やPSで、核文を締めた後に軽く添えます。
・形式:自己卑下は避け、努力や学びを前向きに示します。
例(社内・軽い結び):
「次回は比較表をさらに磨きます。自席のキーボードもそろそろ磨きます。」
リスク回避:初回取引やフォーマル案件では控え、相手の文化・年次・役職を踏まえて判断します【3】。
褒められた時の返し方 モテる人が選ぶ自然な表現

ここでのモテるは、ビジネス場面で好感度が高く、再依頼や推薦につながるという意味合いです。要点は簡潔、相手中心、過剰な自己卑下の回避にあります【1】。
推奨トーン:
・温度のある感謝(ありがとうございます、光栄です)。
・相手の便益に触れる一文(お役に立てて何よりです)。
・再現性への言及(次回も同水準で対応いたします)。
例:
「お褒めの言葉を頂戴し、光栄に存じます。微力ながらお役に立てて何よりです。次回も迅速さを損なわぬよう準備してまいります。」
褒められた時の返し方 かわいい表現で親しみを伝える

親しみを添えたい場面では、敬意を保ちつつ柔らかな語感を一点だけ取り入れます。社内や長期のパートナーに限り、濫用は避けます【2】。
語感の工夫:
・嬉しい限りです、励みになります、ほっといたしました など温度感のある語を一点だけ用います。
・絵文字や顔文字はビジネスメールでは原則用いません。
例(長期パートナー宛):
「温かいお言葉をいただき、嬉しい限りです。引き続き、現場の皆さまにとって扱いやすい形で改善を重ねてまいります。」
褒められた時の返し方ビジネスメール例文まとめ

- 受容を第一に置き、評価を支える一文から始める
- 分配で協働を示し、独占的な功績表現は避ける
- 未来志向の一文を添え、期待の置き場を提示する
- 上司宛は事実と次アクションを簡潔に明示する
- 取引先宛は相手の便益に触れて信頼を強化する
- 過度な謙遜は評価の否定になり得るため避ける
- とんでもございません等の否定語は使わない
- 温かいお言葉を励みに等の柔らかい語感を使う
- ユーモアは核文の後にごく弱く置くにとどめる
- 初回やフォーマル案件ではユーモアを控える
- 記録性を意識し、社外宛は組織としての責任を示す
- 数字や時期を一語添え、意欲と計画性を示す
- 定型パーツを準備し、案件名と相手名で差し替える
- 長文化を避け、三段構成で読みやすさを保つ
- 以上を踏まえ、状況に応じて自然な敬語を選ぶ
参考文献(リンク付き)
【1】平田真美「ほめ言葉への返答」横浜国立大学学術情報リポジトリ(PDF)https://ynu.repo.nii.ac.jp/record/5783/files/KJ00000197820.pdf
【2】髙宮優実「自然会話コーパスに見られるほめへの応答」ことばと文化 43(PDF)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kotoba/43/0/43_111/_pdf/-char/ja
【3】趙文騰「ほめ返答の位置に現れるユーモア」北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院紀要(PDF)https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/91795/1/Jimcts_38%20(1).pdf
【4】山路奈保子「日本語の談話におけるほめの機能」九州大学リポジトリ(PDF)https://api.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/4494572/015_p109.pdf

