職場で「おひたし」や「さしすせそ」という言葉を聞いて、「料理の話かな?」と思ったことはありませんか?
実はこの2つ、仕事でのコミュニケーションを円滑にするための、ちょっとユニークなビジネス用語なんです。
「おひたし」は、主に上司や先輩が部下からの報告・相談を受けるときの心構えを表す言葉です。一方、「さしすせそ」は、相手への関心や称賛を伝える会話のフレーズをまとめたものです。
どちらも覚えやすい言葉ですが、意味を暗記するだけで、仕事がうまく進むわけではありません。
例えば、「怒らない」を「何があっても注意しない」と解釈したり、「さすがですね」を会話のたびに繰り返したりすると、本来の目的から外れてしまいます。
大切なのは、言葉の意味を理解したうえで、相手や状況に合った行動へつなげることです。
この記事では、「おひたし」「さしすせそ」の意味から報連相との関係、具体的な会話例、使うときの注意点まで、新人の方にも分かりやすく整理していきます。




この記事で理解できること
- ビジネス用語「おひたし」の4つの意味と上司に求められる姿勢
- 「さしすせそ」の5つの意味と自然な使い方
- 報連相との関係や職場で使える具体的な会話例
- 言葉を形式だけで終わらせないための注意点と判断のコツ
おひたし・さしすせそとは?
まずは、「おひたし」と「さしすせそ」がどのようなビジネス用語なのか、全体像から確認しておきましょう。
どちらも言葉の頭文字を使った覚え方ですが、「おひたし」は報告を受けるときの行動原則、「さしすせそ」は会話で相手への関心を示すためのフレーズという違いがあります。
| 比較項目 | おひたし | さしすせそ |
|---|---|---|
| 主な目的 | 報告や相談を受けやすくする | 相手の話を受け止め、会話を進める |
| 主に使う人 | 上司・先輩・管理職 | 新人・営業担当・接客担当など |
| 中心となる考え方 | 怒らず、否定せず、支援して指示する | 称賛・関心・相づちを伝える |
| 代表的な場面 | ミスの報告、進捗確認、相談 | 商談、雑談、上司との会話 |
| 注意点 | 問題やミスを放置しない | お世辞や過剰な同意にならない |
例えば、新人が仕事でミスをして上司に報告する場面を想像してみてください。
上司がいきなり怒鳴ってしまうと、新人は次に問題が起きたとき、報告することをためらうかもしれません。
そこで役立つ考え方が「おひたし」です。
一方、取引先との会話で相手の取り組みについて話を聞くときには、「さしすせそ」が会話のきっかけになります。
ただし、どちらも法律や公的な制度によって定義された専門用語ではなく、職場でのコミュニケーションを考えるための標語や語呂合わせです。
そのため、すべての会社で使われているわけではありませんし、言葉を知っていなければビジネスマナー違反になるというものでもありません。
私としては、これらを「守らなければいけない決まり」ではなく、仕事中に思い出せる便利な合言葉として捉えるのがよいかなと思います。
ビジネス用語「おひたし」の意味
ビジネス用語の「おひたし」は、上司や先輩が部下から報告・連絡・相談を受ける際に意識したい4つの行動を表しています。
それぞれの頭文字には、次の意味があります。
- お:怒らない — 感情的にならずに話を聞く
- ひ:否定しない — 最初から相手の発言を切り捨てない
- た:助ける — 必要な支援を行う
- し:指示する — 次に必要な行動を明確にする
この4つは、中央労働災害防止協会が2022年に制作した安全衛生ポスター「おひたし・報連相」でも紹介されています。
職場の安全衛生という観点からも、報告や相談を受ける側の姿勢として活用されている考え方なんですね。
(出典:中央労働災害防止協会「おひたし・報連相」)
ここからは、それぞれの意味を実際の仕事に置き換えて見ていきましょう。
「お」怒らない

「お」は、怒らないという意味です。
仕事でミスやトラブルが発生したとき、上司が感情的に怒るのではなく、まず冷静に報告を受けることを指しています。
例えば、新人から「見積書の金額を間違えて送ってしまいました」と報告された場面を考えてみましょう。
このとき、いきなり次のような言葉を返したらどうでしょうか。
「なんでそんなミスをしたの?」
「送る前に確認しろって言ったよね?」
「こんな簡単なこともできないの?」
ミスを指摘する必要があるとしても、最初から相手を責めてしまうと、肝心の状況確認が後回しになる可能性があります。
それよりも、まずは次のように対応する方が建設的です。
「報告ありがとう。まず、どのお客様に送ったのか確認しよう。」
「金額の間違いはどの部分かな?影響を確認して、訂正の対応を考えよう。」
この対応なら、相手を不必要に萎縮させず、問題の解決へ進めます。
ただし、ここで誤解してほしくないのが、「怒らない」と「注意しない」は別だということです。
金額を間違えて送ったこと自体は、当然ながら改善が必要です。
原因を確認し、送信前のチェック方法を見直すなど、必要な指導は行わなければなりません。
つまり、「怒らない」とはミスを見逃すことではなく、感情と問題解決を分けることなんです。
管理人目線で見ると、ミスをした本人に反省を求めることと、報告してきたことを責めないことは両立できます。私が大切にしたいのは、問題が起きたときに情報が止まらない職場です。まず状況を把握し、その後で改善を考える。この順番を意識するだけでも、対応は変わってくると思います。
「ひ」否定しない

「ひ」は、否定しないという意味です。
部下の意見や相談に対して、内容を十分に聞く前から「無理」「違う」「そんなことはできない」と切り捨てない姿勢を表しています。
例えば、新人が次のような提案をしたとします。
「お客様への案内を、電話だけでなくメールでも送るようにしたらどうでしょうか?」
このとき、上司が「うちは昔から電話でやっているから必要ない」と答えれば、話はそこで終わってしまいます。
一方、次のように返す方法もあります。
「なるほど。お客様が内容を確認しやすくなるということかな?」
「確かに便利そうだね。ただ、メールを使えないお客様もいるから、その点も含めて考えてみよう。」
この返し方であれば、提案の意図を受け止めながら、現実的な課題も伝えられます。
重要なのは、「否定しない」は「すべてに賛成する」という意味ではないことです。
例えば、安全上の問題がある提案や、会社の規則に反する方法まで認める必要はありません。
その場合も、まず相手が何を実現したいのかを確認し、問題となる理由を説明したうえで代替案を考えることができます。
「その考え方は分かるけれど、この方法だと安全上の問題があるので採用できない。別の方法を考えよう。」
このように、相手の考えを受け止めることと、提案を採用するかどうかは分けて考えられます。
新人の立場からすると、自分の提案が採用されなかったとしても、その理由が分かれば次に活かしやすいですよね。
私も、相手の意見を尊重することと、仕事上の判断を曖昧にすることは別だと考えています。
「た」助ける

「た」は、助けるという意味です。
部下が困っているときや、自分だけでは解決が難しい問題を抱えているときに、上司や先輩が必要な支援を行うことを指します。
例えば、新人から「資料作成が思うように進まず、期限に間に合いそうにありません」と相談されたとしましょう。
このとき、単に「自分で何とかして」と伝えるだけでは、状況が改善しないかもしれません。
そこで、次のような対応を考えます。
「どの部分で困っているのかな?」
「構成が決まらないなら、一緒に整理しよう。資料の作成自体は引き続きお願いするね。」
「他の業務が重なっているなら、優先順位を調整できないか確認しよう。」
このように、問題の原因に合わせて支援することが「助ける」の基本です。
ただし、上司がすべての仕事を引き受けることが正解とは限りません。
例えば、資料作成に苦戦している新人に対し、上司が毎回すべての資料を作ってしまうと、本人が経験を積む機会を減らしてしまう可能性があります。
そのため、「助ける」と「代わりに全部やる」は区別して考えることが大切です。
私が管理する立場で意識したいのは、どこまで本人に任せて、どの部分を支援すれば仕事が進むのかという点です。
もちろん、緊急対応が必要なときには、上司が直接作業を引き受ける判断もあります。
状況に合わせて支援の方法を変えることが重要ですね。
「し」指示する

「し」は、指示するという意味です。
報告や相談を受けた後、部下が次に何をすればよいのか分かるように、必要な指示を出すことを指しています。
例えば、新人から「お客様に送る見積書を修正しました」と報告された場面を考えてみましょう。
上司が「分かった。適当に確認しておいて」とだけ答えた場合、新人は次のように迷うかもしれません。
「どこまで確認すればいいんだろう?」
「自分で送ってしまっていいのかな?」
「いつまでに終わらせればいいんだろう?」
こうした迷いを減らすために、指示はできるだけ具体的に伝えます。
「見積金額と宛先をもう一度確認して、今日の16時までに修正版を共有してください。」
「お客様への送信は、私が最終確認してからにしましょう。」
このように伝えれば、次に何をすべきかが明確になります。
指示を出す際には、次の4点を意識すると整理しやすいですよ。
- 何をするのか
- いつまでにするのか
- どの状態になれば完了なのか
- いつ、誰に報告するのか
ただし、指示することは、部下の行動をすべて細かく管理することではありません。
経験や能力に応じて、進め方を本人に任せた方がよい仕事もあります。
新人には具体的な手順を示し、慣れてきたら目標や期限を中心に伝えるなど、相手に合わせて調整することが大切です。
指示の目的は、相手を管理することではなく、次の行動で迷わせないこと。
これが「おひたし」の最後の「し」を、仕事に活かすためのポイントだと思います。
おひたしと報連相の関係
「おひたし」を理解するうえで、ぜひ知っておきたいのが「報連相」との関係です。
報連相とは、報告・連絡・相談の頭文字を取った言葉で、職場で情報を共有するための基本的な考え方として知られています。
新人研修などで聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
| 言葉 | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| 報告 | 仕事の進捗や結果を伝える | 「資料の作成が完了しました」 |
| 連絡 | 必要な情報を関係者へ共有する | 「会議の開始時間が変更になりました」 |
| 相談 | 判断に迷うことや困りごとについて意見を求める | 「納期の調整について相談したいです」 |
この報連相と「おひたし」は、セットで覚えると理解しやすくなります。
報連相とおひたしの関係
新人・部下:必要な情報を報告・連絡・相談する
上司・先輩:怒らず、否定せず、必要な支援と指示を行う
つまり、報連相が主に情報を伝える側の行動であるのに対し、おひたしは情報を受け取る側の姿勢を表しています。
仕事では、部下がどれだけ報連相を意識していても、受ける側の対応によって情報が集まりにくくなることがあります。
例えば、新人が「作業が予定より遅れています」と報告した際、上司が毎回不機嫌になってしまう職場ではどうでしょうか。
次からは、報告するタイミングが遅くなってしまう可能性があります。
その結果、早く共有されていれば対応できた問題が、大きなトラブルにつながるかもしれません。
だからこそ、報連相は部下だけが頑張れば成立するものではないと考えています。
私が管理する立場で大切にしたいのは、「早く報告しなさい」と求めるだけでなく、早く報告してもらえる受け方をすることです。
なお、報連相の歴史については、山崎富治氏が提唱した「ほうれんそう経営」が知られています。1986年には関連する著書も刊行されています。
(出典:国立国会図書館「ほうれんそうが会社を強くする―報告・連絡・相談の経営学」書誌情報)
一方、「おひたし」の正確な考案者や初出の時期は確認できていません。
食べ物の「ほうれん草のおひたし」に掛けた語呂合わせですが、報連相と同じ時期に誕生したと断定できるわけではありません。
「報連相を徹底しよう」という言葉はよく聞きますが、私としては、それを受ける側の姿勢も同じくらい重要だと考えています。報告を受けたら、まず事実を確認する。そして、必要な対応を一緒に整理する。こうした小さな積み重ねが、相談しやすい職場につながるのではないでしょうか。
なお、報告や相談を丁寧な言葉で伝えたい場合は、ビジネス敬語一覧と実務で使える例文集も参考にしてみてください。
ビジネス用語「さしすせそ」の意味
続いて、ビジネス用語としての「さしすせそ」を解説します。
「さしすせそ」は、相手の話に反応するときに使える5つのフレーズを、頭文字でまとめたものです。
営業や接客、上司との会話などで、相手への関心や称賛を表す際の覚え方として紹介されています。
| 文字 | 代表的なフレーズ | 役割 |
|---|---|---|
| さ | さすがですね | 称賛する |
| し | 知らなかったです | 関心を示す |
| す | すごいですね | 成果や取り組みを称賛する |
| せ | センスがありますね | 判断や工夫を褒める |
| そ | そうなんですね | 話を受け止める |
ただし、「さしすせそ」は各文字の意味が厳密に統一された用語ではありません。
「す」は「素晴らしいですね」、「そ」は「その通りですね」など、別の表現を紹介している場合もあります。
また、もともとビジネス専用の言葉というわけではなく、日常会話や恋愛などのコミュニケーション術としても知られています。
ここで重要なのは、5つのフレーズをすべて使おうとする必要はないということです。
それぞれの言葉が持つ意味を理解し、会話の内容に合わせて自然に使うことを意識しましょう。
「さ・し」さすが・知らなかった

まずは「さ」と「し」の2つです。
どちらも会話の中で使いやすい表現ですが、相手や場面によっては言い換えた方が自然な場合があります。
「さ」さすがですね
「さすがですね」は、相手の能力や成果、判断などを称賛するときに使う表現です。
例えば、上司から仕事を効率よく進める方法を教えてもらったときに使えます。
上司:「この作業は、先に一覧表を作っておくと確認しやすいよ。」
新人:「さすがですね。そんな方法があったんですね。」
これでも会話として成立しますが、ビジネスでは少し注意が必要です。
「さすがですね」は、相手を評価しているような印象を与えることがあり、目上の人や取引先に対して使うと、関係性によっては軽く聞こえる可能性があります。
そのため、次のように言い換える方法もあります。
「その方法は思いつきませんでした。勉強になります。」
「先に一覧表を作ると、確認漏れを防ぎやすいですね。」
「その進め方は参考になります。次回から取り入れてみます。」
このように、何が参考になったのかを具体的に伝えると、単なる褒め言葉で終わりにくくなります。
相手との関係が近ければ「さすがですね」と自然に言える場面もありますが、初対面の取引先などでは、具体的な感想を伝える方が無難なこともあります。
「し」知らなかったです
「知らなかったです」は、相手から新しい情報を得たときに、驚きや関心を示す表現です。
例えば、取引先から自社の新しい取り組みについて説明された場面を考えてみましょう。
取引先:「今年から新しい管理システムを導入したんですよ。」
新人:「そうなんですね。知らなかったです。」
これだけでも相手の話を聞いていることは伝わります。
ただし、仕事では「知らなかったです」と答えるだけで終わらせない方がよい場合があります。
特に、自分の担当業務について本来把握しておくべき情報だった場合、単に知らなかったと伝えるだけでは、準備不足という印象につながるかもしれません。
そんなときは、次のように続けてみましょう。
「その取り組みは初めて伺いました。どのような経緯で導入されたのでしょうか?」
「確認が不足していました。教えていただきありがとうございます。」
「その制度変更は把握できていませんでした。適用時期について確認させてください。」
単に「知らなかった」と反応するだけでなく、質問や確認につなげると、会話がより実務的になります。
私としては、知らなかったことを無理に取り繕うよりも、必要な知識を確認して次に活かす姿勢の方が大切だと思います。
「す・せ・そ」すごい・センス・そうなんですね

続いて、「す」「せ」「そ」の3つを見ていきましょう。
この3つは、相手を褒める言葉と、相手の話を受け止める言葉が混ざっています。
特に「そ」の使い方には注意が必要です。
「す」すごいですね
「すごいですね」は、相手の成果や取り組みに対して感心した気持ちを伝える表現です。
例えば、取引先から業務改善の成果を聞いたときに使えます。
取引先:「システムを見直して、作業時間を半分にできたんです。」
新人:「すごいですね!」
自然な反応ですが、「すごいですね」だけでは、相手が何を評価されたのか分かりにくい場合があります。
そこで、成果を具体的に受け止める言い方も考えてみましょう。
「作業時間を半分にできたんですね。特に効果が大きかった改善は何だったのでしょうか?」
このように質問を加えると、会話がさらに深まります。
ただし、どんな話にも「すごいですね」と返す必要はありません。
相手が困りごとを話している場合には、称賛よりも状況を理解する言葉の方が適切です。
「せ」センスがありますね
「センスがありますね」は、相手の判断や工夫、選び方などを称賛する表現です。
例えば、同僚が分かりやすい資料を作成した場面で使うことがあります。
同僚:「今回の資料は、図を増やしてみたんだ。」
あなた:「センスいいですね!」
親しい同僚との会話なら、不自然ではないかもしれません。
ただし、取引先への正式な提案や目上の相手への発言では、「センス」という言葉が少し軽く聞こえることもあります。
そのため、次のように具体的な工夫を伝える方法がおすすめです。
「図が整理されていて、内容を理解しやすいですね。」
「重要な情報が一目で分かる構成になっていますね。」
「色分けが分かりやすく、確認しやすい資料ですね。」
こうした表現なら、相手の工夫を具体的に認めることができます。
「そ」そうなんですね
「そうなんですね」は、相手の話を受け止めるときに使う相づちです。
5つの中でも、特に幅広い場面で使いやすい表現ではないでしょうか。
例えば、取引先から「今は価格よりも納期を優先しています」と説明されたとします。
取引先:「今回はできるだけ早く納品してほしいんです。」
あなた:「そうなんですね。納期を優先されているということですね。」
このように、相手の話を受け止めてから内容を確認すると、認識のずれを減らせます。
ここで注意したいのが、「そうなんですね」と「その通りですね」の違いです。
「そうなんですね」は、相手の話を受け取ったことを示す相づちです。
一方、「その通りですね」は、相手の考えや発言内容に同意する意味を持ちます。
話を受け止めることと、相手の意見に同意することは別です。
例えば、取引先から「来週までに必ず対応できますよね?」と聞かれたとき、安易に「そうですね」と答えてしまうと、対応を約束したと受け取られる可能性があります。
そのような場合は、「ご希望は来週までということですね。対応可能か確認してご連絡します」と伝える方が正確です。
営業やお客様との会話では、私は褒め言葉の多さよりも、相手の話を正確に理解することが大切だと考えています。「そうなんですね」と受け止めたあとに、「つまり○○ということでしょうか?」と確認する。これだけでも、単なる相づちから仕事につながる会話へ変えられますよ。
ビジネスでの使い方と例文
ここまで「おひたし」と「さしすせそ」の意味を確認してきました。
では、実際の職場ではどのように活用すればよいのでしょうか。
ここでは、新人からのミス報告を受ける場面と、取引先との商談を例に、具体的な使い方を整理します。
どちらにも共通するのは、決まった言葉をそのまま使うのではなく、相手の状況に合わせて対応することです。
おひたしでミス報告を受ける

まずは、上司が新人からミスの報告を受ける場面です。
新人のアカネが、取引先に送る見積書の金額を間違えてしまったとします。
アカネ:「すみません。先ほど送った見積書の金額に間違いがありました。」
上司:「なんで確認しなかったの?前にも注意したよね?」
アカネ:「申し訳ありません……。」
上司:「とにかく早く何とかして。」
このやり取りには、いくつか気になる点があります。
まず、上司が最初からミスを責めているため、状況の確認が進んでいません。
さらに、「何とかして」という指示では、アカネが次に何をすればよいのかも曖昧です。
では、「おひたし」を意識するとどう変わるでしょうか。
アカネ:「すみません。先ほど送った見積書の金額に間違いがありました。」
上司:「報告ありがとう。まず、どのお客様に送ったのか教えてもらえるかな?」
アカネ:「株式会社○○様です。合計金額が間違っています。」
上司:「分かった。まず、間違いがある箇所と正しい金額を確認しよう。」
アカネ:「はい。すぐに修正します。」
上司:「修正版は私も確認するね。お客様への訂正連絡は、内容を確認したうえで進めよう。」
アカネ:「分かりました。ありがとうございます。」
この会話では、4つの原則が自然に取り入れられています。
| おひたし | 会話での行動 |
|---|---|
| 怒らない | 報告を冷静に受け止める |
| 否定しない | 最初から責めずに状況を確認する |
| 助ける | 上司も修正版の確認に協力する |
| 指示する | 確認事項と訂正対応の進め方を明確にする |
もちろん、これでミスへの対応が完了するわけではありません。
実際には、取引先への訂正連絡や、必要に応じた謝罪、再発防止策の検討なども必要です。
しかし、最初に感情的にならず、必要な情報を集めることができれば、その後の対応を整理しやすくなります。
大切なのは、ミスをした人を守るために問題を隠すことではなく、問題を早く把握して適切に対処することです。
なお、重大事故や安全に関わる問題では、会社の報告手順や緊急対応のルールが優先されます。
「おひたし」は、そのような正式な手順の代わりになるものではありません。
日常的な報告や相談の言い方を見直したい場合は、ビジネス敬語の自然な言い換えと例文も参考になります。
さしすせそを商談で使う

続いて、取引先との商談で「さしすせそ」を使う場面を考えてみましょう。
営業担当者が初めて訪問した会社で、業務改善の取り組みについて説明を受けているとします。
取引先:「うちは全国に20か所の拠点があるんですよ。」
営業担当:「すごいですね!」
取引先:「最近は管理システムも統一しました。」
営業担当:「さすがですね!」
取引先:「管理画面も自社で考えたんです。」
営業担当:「センスありますね!」
一つひとつの返答が間違っているわけではありません。
ただし、褒め言葉が続くだけで、相手の話の内容が深まっていません。
相手によっては、表面的なお世辞だと感じる可能性もあります。
そこで、次のような会話に変えてみましょう。
取引先:「うちは全国に20か所の拠点があるんですよ。」
営業担当:「全国20拠点なんですね。拠点ごとの管理は、どのようにされているのでしょうか?」
取引先:「最近、管理システムを統一したんです。」
営業担当:「そうなんですね。管理方法を統一することで、どのような変化がありましたか?」
取引先:「各拠点の情報が確認しやすくなりました。」
営業担当:「情報をまとめて確認できるようになったんですね。現在、運用面で困っていることはありますか?」
こちらの会話では、「そうなんですね」という相づちを使いながら、相手の話を具体的な質問につなげています。
また、「すごいですね」「さすがですね」といった褒め言葉を無理に使っていません。
こうした対応の方が、相手の状況や課題を理解しやすくなるでしょう。
商談で「さしすせそ」を活用するなら、次の流れを意識すると分かりやすいですよ。
相づち → 具体的な反応 → 質問・確認
「そうなんですね」
「各拠点の情報をまとめて確認できる仕組みなんですね」
「導入後に困ったことはありませんでしたか?」
この流れなら、相手を無理に持ち上げる必要はありません。
もちろん、本当に感心したことがあれば「素晴らしいですね」と伝えるのも自然です。
大切なのは、その場に合った反応を選ぶことです。
また、商談の内容によっては、無理に称賛せず、事実確認や課題整理を優先すべき場合もあります。
例えば、お客様からクレームを受けている場面で「すごいですね」と返すのは適切ではありませんよね。
相手が何を伝えたいのかを理解し、その状況に合った返答を考えましょう。
私が営業で大切だと考えているのは、相手に気持ちよく話してもらうことだけではありません。話を聞いた結果、相手が何に困っていて、何を求めているのかを理解することです。「さしすせそ」は、そのための会話の入口として使うとよいかなと思います。
おひたし・さしすせその注意点
「おひたし」と「さしすせそ」は、どちらも覚えやすいビジネス用語ですが、使い方を間違えると、本来の目的から外れてしまうことがあります。
ここでは、特に新人や若手社員の方に知っておいてほしい注意点を整理します。
まず「おひたし」では、相手を受け止めることと、問題を放置することを混同しないようにしましょう。
例えば、「怒らない」を意識するあまり、重大なミスや危険な行動に対して何も指摘しないのは適切ではありません。
必要な注意や指導、規則に基づく対応は行いながら、感情的な叱責を避けることが重要です。
同様に、「否定しない」という言葉も、相手の考えを無条件に採用するという意味ではありません。
問題のある提案には、理由を示したうえで修正を求める必要があります。
一方、「さしすせそ」で注意したいのは、相手の話を十分に聞かず、褒め言葉だけを繰り返してしまうことです。
特に「さすがですね」「センスがありますね」などは、場面や相手との関係によっては、軽い印象や上から評価しているような印象につながる可能性があります。
| よくある誤解 | 適切な考え方 |
|---|---|
| 怒らない=注意してはいけない | 感情的にならず、必要な指導は行う |
| 否定しない=何でも賛成する | 意見を聞いたうえで適切に判断する |
| 助ける=全部代わりにやる | 必要な範囲で支援する |
| 指示する=すべて細かく命令する | 相手が迷わない情報を伝える |
| さしすせそ=連発するほどよい | 場面に合った自然な反応を選ぶ |
| そうなんですね=同意する | 受け止めることと同意を区別する |
また、「おひたし」と「さしすせそ」は、どちらも職場コミュニケーションのすべてを説明できる言葉ではありません。
例えば、職場で発言や質問をしやすい状態を考えるうえでは「心理的安全性」という概念もあります。
しかし、「おひたし」の4項目そのものが、科学的に効果を証明された万能な方法というわけではありません。
心理的安全性も、仕事の基準や責任をなくすこととは異なります。
心理的安全性の研究で知られるエイミー・エドモンドソン氏も、心理的安全性を「基準を下げること」や「説明責任をなくすこと」と混同しないよう説明しています。
(出典:Amy C. Edmondson「Psychological Safety Does Not Equal ‘Anything Goes’」)
大切なのは、安心して話せる環境と、適切な指導や仕事上の責任を両立させることです。
言葉の意味を取り違えないために
「さしすせそ」には、料理の基本調味料を表す別の意味もあります。
料理の場合は、「さ=砂糖」「し=塩」「す=酢」「せ=醤油」「そ=味噌」です。
ビジネスの会話で使う「さしすせそ」とは別の語呂合わせなので、検索するときは文脈に注意してください。
(出典:京都調理師専門学校「調味料『さしすせそ』の正しい順番とは?」)
そして最後に、私が一番伝えたいことがあります。
覚えやすい言葉だからといって、その内容をすべての場面に当てはめる必要はありません。
職場には、さまざまな人がいます。
相手との関係性も違えば、仕事内容や緊急度も違います。
「おひたしだから絶対に否定してはいけない」「さしすせそだから必ず褒めなければいけない」と考えてしまうと、かえって不自然な対応になることがあります。
合言葉は、あくまで判断を助けるためのものです。
私は、言葉に行動を合わせるのではなく、仕事を進めるために、その言葉をどう活かすかを考えることが大切だと思っています。
おひたし・さしすせそのよくある質問(FAQ)

最後に、「おひたし」「さしすせそ」について、よく疑問に思われるポイントをまとめました。
「お=怒らない」「ひ=否定しない」「た=助ける」「し=指示する」の4つの意味があります。
ただし、ミスを放置したり、どんな意見にも賛成したりするという意味ではありません。冷静に話を聞き、必要な支援や指示につなげることが大切です。
一般的には「さ=さすがですね」「し=知らなかったです」「す=すごいですね」「せ=センスがありますね」「そ=そうなんですね」を指します。
ただし、表現にはいくつかのバリエーションがあり、唯一の決まった定義があるわけではありません。
会話では、決まった言葉を繰り返すよりも、相手の話を具体的に受け止めることが重要です。
例えば、「さすがですね」や「センスがありますね」は、目上の相手に対して使うと、評価しているように聞こえる可能性があります。
より丁寧に伝えたい場合は、「勉強になります」「その考え方は参考になります」など、具体的な感想に言い換えると自然です。
「報連相」と食べ物の「ほうれん草のおひたし」を掛けた語呂合わせとして理解できますが、誰が最初に考案したのかは不明です。
なお、報連相については、山崎富治氏が提唱した「ほうれんそう経営」が知られています。
「おひたし」は、報告や相談を受けやすくするための姿勢を表しています。問題行動を放置したり、必要な指導をしなかったりすることを求める言葉ではありません。
例えば、ミスの報告を冷静に受けた後で、原因を確認し、改善を指示することは「おひたし」と両立します。
私としては、報告しやすさと仕事上の責任の両方を大切にする考え方だと捉えています。
まとめ|合言葉を行動に変える
今回は、ビジネス用語の「おひたし」と「さしすせそ」について、意味や使い方、報連相との関係を解説しました。
最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
この記事のまとめ
- おひたしは「怒らない・否定しない・助ける・指示する」の4つの行動を表す
- さしすせそは「さすが・知らなかった・すごい・センス・そうなんですね」などの会話表現をまとめたもの
- 報連相は情報を伝える側、おひたしは情報を受ける側の姿勢として理解できる
- 怒らないことと、必要な注意や指導をしないことは別
- さしすせそは、形式的な褒め言葉にせず、質問や確認につなげることが大切
- どちらも暗記だけで終わらせず、職場で使える行動に変えてこそ意味がある
「おひたし」も「さしすせそ」も、言葉としては覚えやすく、少し面白いビジネス用語ですよね。
ただ、私が本当に大切だと考えているのは、その言葉を知っていることではありません。
例えば、部下からミスの報告を受けたときに、感情的にならず、まず状況を確認できるか。
取引先との会話で、ただ「すごいですね」と褒めるのではなく、相手の話を理解しようとできるか。
そうした小さな行動の積み重ねが、職場での信頼関係や仕事の進めやすさにつながっていくのだと思います。
私が仕事で大切にしたいのは、正しい言葉を使っているかどうかだけではありません。相手が話しやすいか、こちらの意図が伝わっているか、そして次に何をすればよいかが明確になっているかです。覚えやすい合言葉は便利ですが、それだけで仕事は進みません。相手への配慮を、具体的な行動に変えていきたいですね。
あなたも、まずは一つだけ意識してみてはいかがでしょうか。
報告を受けたら、最初に相手の話を最後まで聞いてみる。
誰かの話に感心したら、「すごいですね」の後に具体的な感想を一言添えてみる。
それだけでも、普段のコミュニケーションを見直すきっかけになります。
ビジネスマナーは、形だけの正しさではなく、相手への配慮を形にして仕事を前へ進めるためのもの。
ヒロイヨミノ森では、これからも仕事で迷いやすい言葉やマナーを、実際に使える知識として分かりやすく整理していきます。
